2015年12月9日水曜日

私の好きなアンチ・ジハーディスト

インナ・モジャ『モーテル・バマコ』
Inna Modja "Motel Bamako"

 ンナ・モジャは1984年マリのバマコ生れの音楽アーチスト、女優、マヌカンです。これが結構虚飾に満ちて見えるのは、2011年の世界的ヒット"French Cancan"のイメージによるものです。サリフ・ケイタライユ・バンドでデビューした女性ですが、チャーミングな容姿は文句のつけようがありませんけど、商業臭さプンプンのこの軽薄英語ポップは、ずいぶんこの人を「一発ヒットの」「使い捨ての」「純芸能界の」という偏見をつきまとわせたはずです。
 この女性にとっても、故国マリが2012年に北部をイスラム過激派に占領され、多くの北部住民たちが犠牲になったり避難を余儀なくされたり、特に世界遺産であるトンブクトゥー(ティンブクトゥ)の遺跡がジハード派占領者たちによって破壊された事件は非常に大きな衝撃でした。そして、ファッショナブルでショービズ・セレブのポップ・ソウル歌手であったインナ・モジャが、一転してマリにルーツ回帰して、故国の状況にコミットしたプロテストアルバムを制作したのでした。彼女の3枚目のアルバム『モーテル・バマコ』 (2015年10月発表)は、文字通り大部分がマリの首都バマコで録音され、土地の音(コラやバラフォン、マンダング・ブルース・ギター、自然音など)をたくさん導入し、英語の歌詞に混じって、インナはバンバラ語で歌いラップしています。大胆で斬新なエレクトロ・ポップとの融合です。悲しみと怒りと抗議の歌ばかりです。それはマリの内戦のこと、北部の女性たちが置かれている屈辱的な服従状態について直接的に歌われます。
私たちはこれらの侵入者たちと迎合しない
彼らは私たちの父親たちを打ち負かし
私たちの母親たちに服従を強いる
彼らは私たちの声を沈黙させようとする
(トンブクトゥー)
この曲のヴィデオ・クリップはバマコのフォトグラファー、マリック・シディベのスタジオで撮影され、ほとんど化粧なしの顔のインナが闘士的な表情で歌い(ラップし)、 女たちに口を覆うスカーフを取れ(沈黙をやめて発言せよ)と促します。


このアルバムでこの「トンブクトゥー」(2曲め)のすぐあとに「水 Water」(3曲め)というすばらしい歌が来ます。
I used to walk one hundred miles
to get water for my people
I used to walk one hundred miles
to get water, to get water
(水 Water)


 この2曲だけで、私は「意外にも」すごいアルバムを聞いてしまった気になりました。チャラチャラした(在パリ)芸能人イメージを一挙に吹き飛ばしてしまいました。お見それしました。ごめんなさい。支持します。

 2015年10月17日、テレビ・カナル・プリュスの番組『サリュ・レ・テリアン』(司会ティエリー・アルディッソン)に出演したインナ・モジャが、自分の体にまつわる非常に重要な体験を告白しています。それは4歳の時に、両親が不在の時に、大叔母が手を回してインナに女子割礼(エクシジオン、陰核切除)手術をさせてしまうのです。そしてこれはどうしようもないことと諦めていたのに、アーチストとなってパリに出てきたあとで、医学的にクリトリス再生手術は可能だと知るのです。しかもこの手術はいとも簡単なのです。ティエリー・アルディッソンのうまい表現を引用すると、この手術でインナは「スーパー・ウーマン」に生まれ変わったのです。そして彼女のさまざまなサクセスはこの「女性としての再生」のあとにやってくるのです。それ以来、インナはアフリカでのエクシジオン風習の廃止を訴えるアピールをしたり歌をつくったりして、アフリカの女性たちの解放のためのメッセンジャーにもなっているのです。
 (↑)このこと、重要だと思いますよ。

<<< トラックリスト >>>
1. OUTLAW
2. TOMBOUCTOU
3. WATER
4. SPEECHES (feat OXMO PUCCINO)
5. SAMBE
6. BOAT PEOPLE (feat OUMOU SANGARE)
7. THE MAN ACROSS THE STREET
8. MY PEOPLE (feat BALOJI)
9. DIARABY
10. FORGIVE YOURSELF
11. BROKEN SMILES
12. GOING HOME

INNA MODJA "MOTEL BAMAKO"
WARNER MUSIC CD 825646051083
フランスでのリリース:2015年10月

カストール爺の採点:★★★☆☆

(↓)「フォーギヴ・ユアセルフ」オフィシャル・クリップ

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