2014年4月8日火曜日

クロ・ペルガグの奇天烈な世界・3

4月3日パリ11区カフェ・ド・ラ・ダンスでクロ・ペルガグのコンサートがありました。超満員でした。3月11日に18区のレ・トロワ・ボーデで見た時とは全然違ってました。この二つのパリのコンサートの間に3週間あったのですが、ベルギー、スイスを含めて14回のコンサートを消化しています。そういう自分の足もそうですが、テレラマ、レクスプレス、ル・モンド、テレビ局アルテ、国営ラジオ局のFIPとフランス・アンテールなどのバックアップがあって、クロ・ペルガグは飛躍的に知名度を上げたと思います。その評価はすべてポジティヴです。しかしヴァリエテ/大ショービズ界とは違う動き方をしているので、メジャーテレビ局の歌番組に出たり、雑誌の表紙になったり、ということはありません。
 カフェ・ド・ラ・ダンスのコンサートの日の午後、サウンドチェック前の時間を借りて、クロ・ペルガグと20分ほど話すことができました。そのことは雑誌ラティーナの5月号の記事として書きます。私は、この若いアーチストの音楽的ユニークさは、1曲におけるメロディーの多さであり、 AABAやAABCAのようなポップソングの修辞法とはほど遠い、ポップソング十曲分ぐらいのメロディーを一曲に突っ込んでしまう気前の良さであり、大団円に向かうシンフォニックな展開であると思っています。この五線紙のページ数の多さ、しかもその一枚一枚に音符がビシビシに詰まっていて、旋律と和声にスキがないぞ音大で勉強しすぎだぞと思いきや遊びの要素が随所に顔を出す、というケラケラ笑いの作曲才能だと思っています。たしかにケラケラよく笑うお嬢さんでした。
 その曲に、いったいなぜこの歌詞なのか。病気、死、怪物、恐怖、薬物...。人に言わせれば、この曲およびその全体のユーモラスでコミカルな雰囲気とそれに付された詞の「デカラージュ」(ずれ、差)が面白いのだ、と。人、これをシューレアリスムと呼ぶ。それは超有名な引用をしますと「手術台の上のこうもり傘とミシンの思いがけない出会いのように美しい」(ロートレアモン)なのですよ。
 クロ・ペルガグの音楽は美しくも複雑かつ繊細に構築された曲と突拍子もないブラックな詞の若く可憐なお嬢さん上の偶然の出会い、ということになりますかね。
で、病気や怪物の歌ばかりのクロ・ペルガグに思い切ってこう聞いてみました:「あなたのレパートリーにラヴ・ソングはないのですか?」ー ケラケラ笑うお嬢さんは、ここで、キッと顔が変わって、睨むような目つきで「あるわよ。直接的にはそう聞こえないかもしれないけれど、ラヴ・ソングはいっぱいあるわ」と。

 私が見た2回のコンサートでは幕開けの曲がこの「心の病 Les Maladies de Coeur」でした。当然この2014-2015年ツアーではずっとこの曲がオープニングなんでしょう。それくらい重要な曲なんですけど、これはアルバム『怪物たちの錬金術』に入っていません。2012年にケベックでリリースされたクロ・ペルガグのデビューEP(4曲)の中の1曲です。今のところ、私のクロ・ペルガグの最愛の一曲です。以下に歌詞訳を貼付けますね。
あなたたちを驚かせたくて

わたし自分で両脚を叩き壊したの

それをグローブボックスの中にしまっておいたのよ

贈り物用の包装をしようと思ったんだけど

キャベツは見つからなくて、キュウリだけは入れておいたわ

それでもちゃんと皮は剥いておいたのよ

手紙は添えていないけど

もう血痕がサインの代わりだからいいよね



わたしはあなたたちのためにそれをしたのよ

あなたたちの好みは知ってるわ

あなたたちは辛いものが好きなのよね

それから犠牲になるものも好きよね



あなたはわたしにお礼を言わなかったわね

あなたの腕時計をわたしにちょうだい

その時計は狂っていたってかまわないわ

わたしたちは同じ嵐の時をすごすのよ



わたしは連れていかれ、修理にかけられたんだけど

やっかいなことにいっぱい部品が足りない

あの人たちはそれを床下の物置の中で探してくれた

わたしはそれはあなたへのプレゼント用だと言ったのよ



医者たちははわたしと診察予約をとったんだけど

わたしは絶対に行かないわ

医者たちはわたしに

自分をこんなふうに傷つけるなんて信じられないと言った

でもそれは好みの問題でしょ

わたしはあの人たちに言ってやったの

いい?わたしは医者が嫌いなの

あの人たちの心の病が嫌いなの



あなたはわたしにお礼を言わなかったわね

あなたの腕時計をわたしにちょうだい

その時計は狂っていたってかまわないわ

わたしたちは同じ嵐の時をすごすのよ



あなたはわたしに会いに来たけどわたしの顔を見なかった

あなたの目はくらくらしていたのかもね

でも気にしなくていいわ

わたしはあなたの両目が向きを変える前に

捕まえてしまうからね



わたしはあなたと一緒に泳ぎたいのよ

わたしはあなたと一緒に雨のように落ちていきたいのよ



それでもね、わたしはあなたと一緒に大きくなったのよ
それでもね、わたしはあなたと一緒に大きくなったのよ


 訳はずいぶん苦労しました。シュールレアリスムですから(と笑って許していただこう)。で、これ、ひょっとしてラヴ・ソングかな???と思ったのです。男の子の気を引こうとして、自分の脚を傷つけてしまう少女。そうですよね。極端にひねくれてますけど、わかりますよね。

ここに"Les Maladies de Coeur"のヴィデオクリップを貼ろうと思っていたのですが、あらあら、ウェブ上から消えてしまいました。再び見れるようになったら、すぐに貼付けます

(↓)2013年秋、ゲベックのSIRIUS XM によるクロ・ペルガグのインタヴュー。素顔はこんなに素直そうなお嬢さんなのに。



PS : 自慢げに掲載します。クロ・ペルガグさんと筆者

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