2010年12月3日金曜日

ヨムの国 不思議な旅



 11月30日(火)、パリのカフェ・ド・ラ・ダンスで、「クレズマー・クラリネットの新王」ヨム君とその新しいバンド、ザ・ワンダー・ラバイス(The Wonder Rabbis 不思議のラビ導師たち)のコンサートでした。
 このバンドのアルバム"WITH LOVE"はこんな風なジャケで、クラリネットを持ったスーパーヒーローとなったヨム君が、黒い円筒形のラビ帽をかぶった3人の黒筋肉ファイターを連れて、日夜正義のために戦う、という図です。ただ、アルバムはまだ制作中で、来年の2月にリリース予定ですが、録音は済んだものの、まだ曲名も決まっていないものばかり、とヨム君が曲間のしゃべりで言ってました。
 これまでヨム君は2008年に『ニュー・キング・オブ・クレズマー・クラリネット』、2009年に『ウヌエ(はじめに)』という2枚のアルバムを発表していて、そのケレン味たっぷりの超絶技巧と、目立ち好きのショーマンシップと、他流試合好きな新奇趣味で,僭称した「新王」の地位を確固とした王位に近づけつつあります。チューバと打楽器とピアノとクラリネットという編成だった2008年から、イブラヒム・マルーフ(トランペット)、ワン・リ(口琴)、ビージャン・シェミラニ(ザルブ)などと一対一の二重奏(アルバム『ウヌエ』)を経て,2010年型のヨム君はフェンダー・ローズ(エレピ)、5弦エレキベース,ドラムス,という3人を従えて、ヨム流「サイケデリック・クレズマー」を展開します。
 ジャズ色はぐっと後退し(なにしろヨムのクラリネットを除いては誰もソロ・アドリブを取らない)、プログレッシヴ・ロック的にそのアトモスフィアを創りだすことに専念する3人、ザ・ワンダー・ラバイス。なぜこのバンド名がついたか、というヨム君の説明がふるっています。「3人に共通したものは何か? それは黒縁四角フレームの眼鏡!」。たしかにこの眼鏡だけで怪しげなジューイッシュ(別の言い方では「不思議なラビ」)ということに何の説明も必要ないでしょうに。コンセプトはヨム王と不思議なラビの3人が、孫悟空/猪八戒/沙悟浄を供に従えた三蔵法師の「西遊記」よろしく、中欧/東欧を探訪する「東遊記」というマジカル・ミステリー冒険絵巻なのです。いろんなキノコを食べながら道を進むので、おのずとサイケデリックになるわけですね。
 ヨム君のステージを見るのはこれが3回目ですが、見る度にこの人は本当はギタリストになりたかったのだ、ということが確信できるようになります。何を間違ってクラリネット奏者になったのか、という自問自答の果てに、華麗なるロックギターヒーローと見まがうケレン味を身につけたのでしょう。海老反りのクラリネットと70年代サイケデリック〜80年代ニューウエイブとも共通するエレクトリックなサポート隊。ディーヴォっぽかったり,キュアーっぽかったり、クリムゾンっぽかったり...。コンセルヴァトワールでクラリネットを勉強しながら,影でこんな音楽聞いていたのですね。
 アルバムが本当に楽しみです。わくわくです。


(↓まだ曲名もついていない曲を披露するヨム君)

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