2010年8月30日月曜日

ああ!(モールス信号ではアーケード通行,アーケード通行)



 8月29日,今年も妻子を連れて川向こうのロックフェスRock en Seineに行ってきました。4年前初めて娘をこの巨大野外フェスに連れて行った時は,娘はまだ小さくて,大轟音と行儀の悪い若い衆たちに巻き込まれるのはどうしたものか,と心配したものですが,この写真(←)のように,こんなに大きくなってしまったので,来年はもうおとやんおかやんとは一緒に行かない,ダチたちと一緒に行く,と言い出す始末。なぜならおとやんとおかやんは折り畳み椅子持ってきて,ステージから遠いところで「座って見よう」という年寄りな態度ですが,娘は最前列に行ってガシガシ飛び跳ねたいというロックな少女になってしまったからなんですね(既に去年からサン・ジェルマン島のM6ライヴなどで,コピーヌたちと最前列でもみくちゃになることを体験済み)。娘の成長に目を細める一瞬です。
 天気予報では空模様は変わりやすく,宵には雨とのことでしたが,気温は最高でも20度前後までしか昇らないと言い,私たちもかなりの重装備で行きました。この写真は午後5時15分から組まれていたウェイン・ベックフォードのショーの時に撮ったものですが,こんな風に灰色の空で,周りの人たちもこんな風な厚着で。寒々。
 実は私と娘はそれぞれデジカメを持っていったのですが,現地に着いて,その二つとも「電池残量がありません」の表示が出て来ることを知ったのでした。昔の観光地みたいにフィルムと乾電池を売ってる売店などあるわけもなし。私も娘もほとんどお写真することができなかったのでした。かろうじて娘のケータイでちょっとだけ。

 当日最初のライヴは2時半から始まってましたが,私らの現地到着は午後4時頃で,右図マップの(A) GRANDE SCENEに急行,イールズを。これがイールズか。急遽プログラム変更でZZトップが代替え出演したのかと思いましたよ。うぁあオールドスクール。3曲めでラヴィン・スプーンフルの「サマー・イン・ザ・シティー」なんて気持ち良さそうにカヴァーしちゃうもんだから,当日の天候に不調和はなはだし。折り畳み椅子を畳んで,右図マップを左端から右端まで急いで移動して,(C) SCENE DE L'INDUSTRIEアイアム・アン・シアン!!へ。
なんて美しいジャンプをする子なのだ,ダヴィッドは!キメがいちいちバシバシに決まる轟音エレクトロ・ロックで,こういう大ステージでなければ決まらない,アクロバティックなジャンプを連発大サービスで,この煽動に大揺れの人並み。小さいクラブだったらどうするんだろうか。こういう惜しみないエネルギーとサービス精神というのは野外でこそ,と思いましたね。いやあ,爺の奥様も首大振りしてましたからね。
 次いで隣の(B)SCENE DE LA CASCADEウェイン・ベックフォードを。ジャマイカ・オリジンの米ソウルマンで,ブラック・アイド・ピーズやアウトキャストに曲書いてた人。何でもできる人でR&B,レゲエ,スカ,サッカースタジアムでおなじみ「セヴン・ネイション・アーミー」や,キンクス「ユー・リアリー・ガット・ミー」までやっちゃって,すごいエンターテイナーなのに,器用なカラオケ歌手と変わんないじゃん,という気にも。
 6時から(A) GRANDE SCENEベイルートを,と移動しかけたところで,女性軍からトイレストップのリクエストあり。これが野外フェスの最大の難点ですよね。男どもは(みんなやってるから)そこらへんいたるところで立ちションで,周囲の林はフェス3日めともなるとかなり嫌な臭い。女性たちは長蛇の列でトイレ待ちしますが,30分待ちなんてザラですから。このロスタイムで,6時台のショーはすべてあきらめて,食事休憩にして,娘と爺はオーヴェルニュ地方名産のアリゴ(ポテト・ピューレにチーズを溶かし込んだ,つきたて餅状の食べ物)とオーヴェルニュの焼きソーセージを,爺の奥様はテックスメックス屋でファジタスを買って,野外テーブルで食べましたが...今年はどれもこれも全然美味しくなかったのでした。
 雲ゆきはさらにおかしく,特に風が強くなってきた8時頃,(A) GRANDE SCENEで,娘の最大のお目当てのザ・ティング・ティングスを。 (↑)人様の撮った動画(from YouTube)ですが,いやあ....こんな大ステージを二人だけで(曲によってはホーン隊がつけましたけど)。ポップの鑑ですね。この動画で見えますか?この時かなり強い砂混じりの風が吹いてて,ケイティー嬢はかなりつらそうだったんですよ。
 8時45分から(B)SCENE DE LA CASCADEロクシー・ミュージックだったんですが,爺たちは9時過ぎてからの到着で,前半見逃しました。私はもっとこじんまりした編成を期待してましたが,コーラス嬢4人を含む十数人編成で,水増しピンク・フロイドみたいな感じも。特にフィル・マンザネラのギターソロと女性コーラスがからむインスト部分では,デイヴ・ギルモアのフロイドショーみたいになっちゃいますね。アンディー・マッケイ(サックス)は来ましたが,予告メンバーのポール・トンプソン(ドラムス)は来なくて,アンディー・ニューマークが叩いてました。ブライアン・フェリー65歳はフランス語しゃべるし,ショーマンだし,私の周りの中年たちはかなり盛り上がってて,"Love is the drug"とか"Let's stick together"とか大唱和してました。いいねえ,年寄り向きのロックフェス。ラストナンバーは「ジェラス・ガイ」でした。ブライアン・フェリーは口笛音痴(↓ これも人様の撮った YouTubeです)。


 最後の最後,大トリ。午後10時ぴったりに始まった(A) GRANDE SCENEアーケイド・ファイア。爺は出たばかりのサードアルバムしか持っていないのだけれど,すごく深く重いCDに聞こえました。こういうのが米チャートと英チャートで1位になるんですね。門外漢なので,こういうCD聞く人たちって暗めなんじゃないか,と思ってましたら,自分の周りを見回したら娘と変わらないような子たちばかりで...。すごい人の数。かなり密度が濃くって,去年同じ場所で見たMGMTの時を上回る感じ。重層な音楽なのにステージ上の7人が右左に動き回って,さまざまな楽器を持って奮闘してるんですね。「動的なメランコリー」そんな言葉が頭に浮かんだりして。その動的な部分でオーディエンスは大揺れになるんですね。ファンとミュージシャンたちが一緒になって大オーケストラを構成している感じで,それをウィン・バトラーが指揮しているような。ウィンのパートナーのレジーヌはハイチの血が流れる女性で,フランス語でコミュニケートします。そして,40分後頃でしょうか,にっくき雨が,これまで我慢していたみたいな勢いで激しく降ってきます。その上風向きが悪く,その激しい雨はステージを直撃し,ミュージシャンもステージも楽器も水浸しになります。コンサートは中断,雨が弱くなったらまた演るから,とウィンが言うのですが,雨はどんどん激しくなるばかり。しばらくしてレジーヌがマイクを取り,フランス語で「ごめんなさい,雨で電子機器に障害が出ちゃったの,でも私たちは続けたいのよ」と言いました。
 ここで爺たちは雨具を身にまとい,多くの周りの人たちと同じように,激しい雨の中を出口に向かって移動し始めたのです。最後に雨だったけど,すごくいいコンサートだったね,などなどとみんな口にしながら,不満の声など全く聞こえなかったのです。妻子にも,ああ,これで夏が終わっちゃったね,来年もまた来ようね,なんてオセンチなこと言いながら,爺たちは川を渡って自宅に帰ったのでした....。
 ところが,家に帰ってパソコンつけたら,Twitterで「まだやってる」なんて書き込む人たちがいて...。後で知った,われわれ帰宅後に演奏されたアーケイド・ファイアの豪雨の中での"Wake up"のアコースティック・ヴァージョンが Dailymotionに載りました。

Arcade Fire - Wake Up (Rock en Seine)

 爺たちはこのエモーションを共有できなかったのです。悔しい。ああ!

0 件のコメント: