2010年8月14日土曜日

「Aïoli ! 」を日本に適合するあいさつにすれば...

 私は今までずっとこの Aïoliを「アイオリ」とカタカナ表記してきたのですが、日本では「アヨリ」という方が通っているかもしれません。どうも"ï"の上についたトレマ記号(上のテンテン)が気になって「イ」を強調しなければならないように思って「アイオリ」としていたのですが、発音記号通りにカタカナ表記すると「アヨーリ」が近いかもしれません。マッシリア・サウンド・システムのライヴ盤などでコールされる "Aïoli!"は「アィヨーリ!」と聞こえます。
 アヨリは南仏プロヴァンス地方の、ニンニクとオリーヴ油入りのマヨネーズで、ブイヤベースに欠かせない調味料で、そのまま生野菜スティックなどのサラダソースにも使えます。パスティス酒、ブイヤベース、アイオリはガストロノミック・マルセイユの三大名物と言えましょう。1980年代からマルセイユを拠点に活動しているレゲエ/ラガマフィン・バンドのマッシリア・サウンド・システムは、この香り高きマヨネーズをそのレゲエ世界に取り込み、ジャマイカンのポジティヴな形容詞「アイリー! Irie!」(ゴキゲン、最高、気持ち良い)をもじって、「アィヨーリ! Aïoli!」を「ハッピーかい?/ハッピーだぜ!」のあいさつ言葉/かけ声に採用し、マッシリア親衛隊(マッシリア・シュールモ)などを通してたちまちのうちにマルセイユで最高にゴキゲンのあいさつ言葉として定着したのでした。
 マルセイユ的アイデンティティーとレゲエ的ユニヴァーサリティーを見事に結びつけたこの素敵な「アィヨーリ!」は、マッシリアが行くあらゆるところでファンたちのゴキゲンなフィーリングを伝える言葉になりました。「ハッピー!」、「クール!」、「シュペール!」などとは違う、彼らの歓喜を表現する「アィヨーリ!」は他の言葉で置き換えられるものではないでしょうが、なんとか私たちでもそれに似たものができないかしら、というのが本稿の課題です。
 この夏6月からマルセイユに滞在して、マッシリア、ラ・タルヴェーロ、ジジ・デ・ニッサ、ムッスーT&レイ・ジューヴェンなどが出演した南仏各地のフェスティヴァルを精力的に見て回っているおきよしさんは、マッシリアを初め多くのアーチストとその周辺の人たちと交流されていて、その様子は彼女のFacebook を通してうかがうことができます。その中でおきよしさんは、「アィヨーリ!」を大胆に日本語化して「Nin ni ku! ニンニク!」とマルセイユ人に応答しています。「アィヨーリって日本語でどう言うの?」と聞かれたら、「ニンニク!」と答えているんでしょう。これがこの夏だけで、マルセイユのある種の人々が「Nin ni ku!」とあいさつし始めちゃってる現象もあるようです。なにしろマッシリアのムッスーT、タトゥーですら、おきよしさんの教えで「Nin ni ku!」って言っちゃってますから。

 で、私は「アィヨーリ!」を「ニンニク!」とするのに、ちょっと躊躇しちゃったのです。もうちょっと工夫できないかな、と。「ニンニーク!」と言うと、「タ・メール!」と返ってくるんじゃないかな、と。(解説しますと、nin nique!と聞こえる可能性があり、niqueは俗語動詞 niquer = ニケ、すなわち「やる、ファックする」の命令形、すなわち関西弁表現の「やてまえ、いてこませ」に聞こえるんじゃないか、そうすると NTM で知られるかの表現 nique ta mèreニク・タ・メール にも連鎖し、非常にマザファカなニュアンスが現出してしまうのではないか、と)。
 「ニンニク」はフランス人には言いづらいと思います。直訳のフランス語は"l'ail"(ライユ。定冠詞"l'"をとると、アイユ)がニンニクに相当します。アイユとオリーヴ油が入ったマヨネーズ、これが「アイユ+オリ」=「アヨーリ」です。こういうなめらかな音感で、かつスパイシーで「南」風な雰囲気が伝えられ、日本にも通用する言葉がないか、と私は考えたのです。案は二つあります。


< 1 > Mayo !
 既に日本語として定着しているマヨネーズの短縮形「Mayo」。これを「マヨっ!」って言うんじゃなくて、「マィヨっ!」と発音する。イントネーション的には関西の「まいどっ!」と同じ抑揚をつける。「ま、いいよ」というダレた感じを避ける。短く歯切れよくに「マィヨっ!」と言い切る。そうすると、知っているムキにはフランス一周自転車レース、トゥール・ド・フランスでおなじみのレースリーダーが着る「マイヨ・ジョーヌ Maillot jaune」なんかも連想され、そこはかとないフランスっぽさが醸し出される。関西〜広島の風土で育ったお好み焼きにつきものの「マィヨっ!」、大阪の日常あいさつ「まいど」に近い「マィヨっ!」、フランス風な味覚とスポーツを連想させる「マィヨっ!」 --- これを「アィヨーリ!」の日本版として採用していただけないでしょうか? 
 弱点はややスパイシーさに欠けるところでしょうか。


< 2 > La-Yu ! 
辣油。「ラーユー!」。なんと言っても発音が"L'ail"(ライユ = にんにく)によく似ています。ニンニクは入っていなくても鷹の爪の辛さが激烈にスパイシー。中華文化としてではなく、日本の食文化として欧米世界に大人気を獲得しつつあるラーメンに伴って、これからフランスでも認知度が高まるでしょう。また2000年代以降、沖縄ラー油、石垣島ラー油、久米島ラー油など、日本に固有のラー油人気の上昇もあり、南方ジャパンのオリジナル・チリペパー・オイルという位置づけも、南方フランスと連帯するあいさつ言葉にふさわしいのではないでしょうか。「アィヨーリ!」と「ラーユー!」、どことなく発音も近いですし。
 弱点はマヨネーズともニンニクとも関係ないところでしょうか。

 やっぱり「アィヨーリ!」は日本でもそのまま「アィヨーリ!」で通すのが一番でしょうか?
 昔の日本の人はこんなことも言ってました「青はアィヨーリいでてアィヨーリ青し」。



(↓)マッシリアのガリのあいさつの最初と最後の「アィヨーリ!」を参照ください。

3 件のコメント:

おきよし さんのコメント...

Nin-ni-ku、やはり大胆すぎましたか(苦笑)一応、Aioliはニンニクソースかニンニクオリーヴオイルだよと何人かには伝えたのですがさすがはマルセイエーズ!聞く前にもう連呼!タトゥーもNin-ni-kuの方がいいやすい?!とこれまた連呼!!それまではsushi,sake!だったんですが、もうすっかりみんな私に呼びかけるときはNin-ni-kuになっちゃいました。確かになかなかふさわしい日本語浮かばないですね。思いついたらfacebookでupします!

かっち。 さんのコメント...

辞書的には発音は「アヨリ」だけれど、日本語的には「アイオリ」みたいです。どうせ読めば同じ。バンジャマン・ビョレ?

mayonnaise à l'ail なんだから「マヨラーユ」ではだめですかね。

本当は日本人も自国文化に誇りを持って「ショーユ」と応じるべきかもしれません。しょーゆーことを、しょっつる考えてしまう。

Les Mets de provence さんのコメント...

Crédit photo "Les Mets de Provence" pour l'image de l'aïoli : http://www.mets-de-provence.fr/condiments/228-aioli-90-gr.html