2010年6月16日水曜日

全世界で18万人



 2010年6月,世はどちらを見てもサッカーW杯。私が定期購読している数少ない雑誌(実際には2誌のみ。週刊テレラマと...)のひとつロック&フォーク誌の最新号も表紙はこれです。中に「ロックとサッカー」という特集記事もありました。ロック&フォークはフランスの中高年向けのロック誌です。レ・ザンロキュプティーブル誌の読者層が25-35歳であるのとは対照的に、60-70-80年代にリアルタイムで往時のロックを聞いていた人たちが読む雑誌です。老人の戯言と言わば言え,若い衆にはわかるまいに、というエディトリアル・ラインがはっきりしています。
 編集長のフィリップ・マヌーヴルは、2年前から民放TV局M6のスタ誕番組「ヌーヴェル・スター」で審査員をしていて,メジャーマスコミでの露出度が俄然アップした男ですが,私と同年同月生まれの55歳(数日後に56歳)です。最初にロック&フォークに記事デビューしたのが1973年のことで、イギー&ストージーズ"Raw Power"を論じています。ローリング・ストーンズをこよなく愛し,ミッシェル・ポルナレフの自伝本『ポルナレフによるポルナレフ』(グラッセ社刊2004年)には共著者として名を連ねるほどポルナレフと密接な関係にあります。テレビではずいぶんとテレビ向けのサービスをしますが(つまりアホなこともずいぶん言いますが)、同世代ということもあってマヌーヴルの言うことはよくわかり,共感する部分が多いです。
 月刊誌ロック&フォークは毎号最初のページがマヌーヴルの巻頭論説です。今月はこういう時期でこういう表紙なので、マヌーヴルもロックとサッカーの関係について書いています。ロックがスタジアムを埋めるようになってから,ロックとサッカーは同じ運命を辿るようになったのか、ということにマヌーヴルは苛立ちます。両者の世界,両者のシステム,両者のフィロゾフィーは全く異なるのだ、と言います。今日ロックやポップのスターたちがスタジアムを埋めようが、その影にある危機的状況は隠しきれるものではない、という続きをもってきます。以下そのまま訳してみます。

 昨今,フランスのシングルチャートでは1週でたったの4500枚しか売っていないものが1位になる。この数字は今日もなおどうしてCDを出し続けるのかを真剣に考えさせるものだ。また,ビルボード誌がレコード産業危機の被害者数を推定している。それによるとこの地球上で,少なくとも18万人の人間が職を失い,解雇されるか早期退職を余儀なくなれたことになっている。これは多くの工場が閉鎖されたことでもある(そして多くの少女たちが街頭の立ちん坊になったことでもある)。しかし,この信じられない数字を、誰も論じようとはしないのである。どこにもこのことはコメントされていないのだ。きみたちはここからどんな結論を引き出そうが勝手だが、スタジアムへ向かう道途中で考えてほしい。

 私はフィリップ・マヌーヴルを抱きしめたい気持ちです。

1 件のコメント:

某ファンサイト管理人 さんのコメント...

コメントではご無沙汰しております(^^)。
某ファンサイト管理人でございます。

最後の項、一般人の音楽好きの私にも業界の異変を目に見えて感じております。ちょっと前までは普通のスーパーにも必ずあったCDショップですが、今は無くて当たり前。大手じゃない普通の路面店は気が付くと消えています。

更には、そんなお店(神奈川のタハラさんはご存じでしょうか?)でも、なんと新譜はあっても、中古CDを普通に併売している状況です・・・。でもまだお店が残っているだけ良しとするべきなのでしょうか?

お店での未知な音楽との出会いが楽しみだった私には、もうこの先を考えたくない状況です。オリコンチャートの音楽も、すでに音楽が特定のファン向けのノベルティ商品扱いですし・・・、悲しいけれど商業音楽が一番活き活きしていた時代も、すでに歴史の一部になっているみたいですね・・。悲しくて、嗚呼、とか言えません。