2008年12月26日金曜日

2008年よく聞いたアルバム・その1



Thomas Fersen "Trois petits tours"
 トマ・フェルセン『三べん回ってタバコにしょ』


2008年9月 Tot ou tard。フェルセン7枚目のスタジオアルバム。カバン物語。ジェルメーヌという名前をもった旅行カバン、ウクレレ君、ギター君、巨大なきゅうりに乗っての大旅行。もう何をやったってトマ・フェルセンの世界ですから、面白いように出て来るシュールな演し物にあははは...と喜ぶしかないです。強烈な個性の上にあぐらをかいた芸、のような手厳しい批評をヴァレリー・ルウー(テレラマ誌)はしたのですが、森羅万象にふっと一息かけただけで、動物君も昆虫君も植物君もカバンちゃんもウクレレちゃんも全部フェルセンの言うことを聞いて、フェルセン音楽のワンダーランドが作れてしまうのだから、この個性はこのまま続けていってもらわないと困ると私は思うのです。
ジャン=バチスト・モンディーノ撮影のジャケットもすごい、としか言いようがありません。トマ・フェルセン "3 petits tours"CD'AUJOURD'HUI



MGMT "Oracular Spectacular"
 MGMT『オラキュラー・スペクタキュラー』


2008年6月 Columbia/Sony-BMG。もういろんなところで(英国NME、仏国レ・ザンロキュプティーブル...)2008年のベストアルバムに選ばれているから、爺からは何も付け足すことはないのだけれど、このアルバムを6月に手にした時、30-40年前にロックってすごいなあと思ったことが、この2008年にもう1回体験できたような気がしたのですよ。この子たちは世界中の年寄りたちを舞い上がらせたでしょうね。生意気で反抗的で違う方向のヴィジョンがあって美しい。それだけではなくて、この子たちの使う語彙(あ、メタファー的な意味ですよ)の多さは、年寄りたちが使っていたものですよ。若い人たちが熱狂するのは当り前。年寄りたちが頷くのも当り前。「音楽をやろう、金を稼ごう、トップモデルを妻にしよう」(Let's make some music, make some money, find some models for wives.I'll move to Paris, shoot some heroin, and fuck with the stars.アルバム第1曲"TIME TO PRETEND")。爺たちにはロックはそんなものだったのです。ル・パリジアン紙ヴィデオ「バタクランのMGMTの反応」



Christophe "Aimer ce que nous sommes"
 クリストフ『あるがままのわれらを愛すること』


2008年7月 AZ/Universal。63歳。ダニエル・ベヴィラッカ、アーチスト名クリストフはずいぶん前から老紳士の振るまいをしています。それは若い頃から(身に)厳しい創作活動をしてきたことを物語っているようです。1曲作るたびに顔の皺が増えていったような。身と心から絞り出すような作品ばかりです。作った本人はどんどん抜け殻に近くなっていく、そんな極端な創作態度のアーチストだと思います。
自ら強いて63歳のすべてから絞り出したようなアルバムです。第一声の「うぉ、うぉ、うぉ...」という呻きとも感嘆とも忘我とも聞こえるヴォカリーズから、命をすり減らすアートを思わせます。神々しいオラトリオのような曲「マル・コム」は、「時間が与えられたら、それ自体の恵みとして使おう、ありがたい恵み、それはあるがままのおまえを愛すること、あるがままの私を愛すること、すなわちあるがままのわれらを愛すること」と歌われます。こんな言葉を発したら磔刑に処されるでしょうに。
クリストフ『あるがままのわれらを愛すること』インタヴュー

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