2008年11月8日土曜日

今朝のフランス語「クークー」



 くうくう【空空】
 (1)何もないさま。むなしいさま。(2)[仏]大乗仏教の根本真理である空の立場は固定的に実体現されてはならず、さらに空として超克していかなければならないということ。空のまた空。
 (広辞苑第4版)

 coucou[kuku]〈擬音〉n.m. 1.【鳥】かっこう。2. 鳩時計(=pendule à 〜)。3.【植】ラッパ水仙(=narcisse des bois)
 coucou[kuku]ーint. 1..C〜!(隠れんぼで)鬼さんこちら。2.C〜(me voilà) !(不意に現れて)ばあ!
 (新スタンダード仏和中辞典)

フランスの社会党(PS)は2002年大統領選第一次選挙でのジョスパン落選以来、万年野党の地位に低迷しています。それはその旧体質が原因していると言われ、イデオロギー政党の教条主義からなかなか抜け出せないために支持者を失っていきました。この社会党の頑固な古株は「マムート」(マンモス)と呼ばれ、ジョスパン、ロカール、エマニュエリ、ラング、モーロワ等々のミッテラン時代の化石遺産を排除しない限り、21世紀的現実に対応する政党として再生できないと言われていました。2005年に、セゴレーヌ・ロワイヤルが大統領選に出馬の意志を表明した時、社会党内では「じゃあ、家事は一体誰がするのかね?」という滅茶羅苦茶羅な女性差別の発言をするマムートがいて、社会党に巣食うアナクロ病の重さを感じさせたものでした。
 そういう社会党だから体質を刷新して、サルコジと一騎打ちできるような若手が出てくるかどうかが、2007年選挙の課題だったわけです。セゴレーヌ・ロワイヤルは徐々に陣地を拡げて、公認候補として正式に選出されたものの、党内には足をひっぱる輩がいっぱいいて、何か失言したりするたびに「ああ、やっぱり女だから」みたいなことを平気で言うやつがいて...。
 2007年5月大統領選、サルコジ54%、ロヤイヤル46%という「大差」で負けた時から、党内でロワイヤル降ろしが始まり、この女だから負けたのだ、というかなりローブローな非難が集中します。
 あれから1年半、社会党は派閥抗争を繰返し、リーダー不在のまま、フランソワ・オランド(結婚はしていなかったがセゴレーヌ・ロヤイヤルの元伴侶。大統領選挙前から既に破局。)が占めていた党第一書記の地位をめぐって、内部対立が顕著になっていましたが...。
11月14日にランスで開かれる党大会で、その第一書記が選出されることになっていますが、その立候補者4人の4つの党方針構想に対する党員の承認投票が11月5日に行われ、11月6日午前2時にその開票結果が発表され、大方の予想(パリ市長ベルトラン・ドラノエがトップになるであろう)を裏切って、セゴレーヌ・ロワイヤルが第一位となったのです。
 1年半吹き荒れたロヤイヤル降ろしの嵐にもめげず、傷だらけのセゴレーヌは帰ってきました。なんだかんだ言われても、サルコジと一騎打ちが出来る器の左翼人はセゴレーヌ・ロヤイヤルである、と党員は信頼を再び託したわけです。この1年半の臥薪嘗胆時代、セゴレーヌはよく耐えたし、何を言われようが、サルコジ政治への批判発言をやめようとしない、頑なな反サルコジ姿勢が、再び正当な評価を受けようとしているのだと思います。
 11月8日、リベラシオン紙の第一面は「クークー、セ・モワ!」と見出しされた、セゴレーヌ・ロヤイヤルのカムバック記事です。空のまた空。そうやって超克していってくれれば、この女性は大政治家になると思います。
 折りも折り、オバマ当選の興奮から醒めない多くのプレスは「フランス版オバマの登場はありうるか?」みたいな問いを出します。その時にセゴレーヌ・ロヤイヤルのカムバックが重なって、「えええ!? またあの女!?」のような侮蔑的な反応もあります。フランスは社会党内だけでなく、全国的に旧体質の考え方がまだまだ抜けないのです。

 ←社会党のマンモスたちは「死刑!」と言っているようなポーズ。

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