2008年10月1日水曜日

アブダ仏如来

 アブダル・マリック『ダンテ』  Abd Al Malik "Dante"  ダンテの「神曲」はオック語で書かれたということになっています。クロード・シクルが言っていました。ダンテの頃は欧州全土の知識人の間での共通語がオック語であったそうです。ちょっと関係ないイントロですみません。  アブダル・マリックの3枚目のアルバムです。前作『ジブラルタル』は25万枚を売りまして,日本盤も出たので聞いた方も多いと思います。もうほとんどジャック・ブレルの歌を聞くような,シャンソンの最良にエモーショナルな部分を,言葉とバックトラックとアブダル・マリックの声の力で圧倒的に表現したスラム・アルバムでした。もうスラムというジャンルなんかどうでもいい,人間の器の大きさが勝ってました。  前作もでかい顔(イースター島の巨石顔像のよう)でしたが,この『ダンテ』のジャケの顔もすごいですよね。頭部から額そして鼻梁へ,一筋の光がすっと降りてます。くっきりとした深い線の入ったまぶた,その下にある目をじっと見ると,なんでも言うことをきかなければならないような気になってきませんか。おまけに背後に鏡モザイクで光環ができてますし。なんて神々しい...。なんまんだぶ,なんまんだぶ...。  前作に続いて,ブレルのピアニスト,ジェラール・ジュアネスト(ジュリエット・グレコの夫)がピアノ,作曲(一部),編曲でシャンソン的なるものをいっぱい運んできます。エレクトロでグルーヴな部分はビラル(作曲)がいっぱい運んできます。ジャズ的なるものはレジス・セカレリ(高名なドラマーの息子です)がもたらします。そしてアーリー・シクスティーズな雰囲気は,アラン・ゴラゲール(初期ゲンズブールの編曲者/バンドマスター)がもたらします。  これらのメンツ(オケ)が録音スタジオに集まって,ジュアネストのピアノ,アブダル・マリックの声,全部まとめて一斉にダイレクト録音です。これがほとんどの曲が2テイク録らなくてもいいような,奇跡的な恩寵のパフォーマンスであったそうです。天使が降りてきたんでしょうね。  なにか,とても神を感じさせる雰囲気です。  11月3日リリースで,音サンプルが3曲("C'est du lourd", "Le faqir", "Paris Mais")しか届いていないのに,アルバム全体を評するのは危険でしょうが,3曲で膝ががくがく状態です。この声は人を動かしてしまわずにはおかない,ものすごい霊力があるのだと思います。  リリース後全曲聞いてから,またこの項書き直しましょう。 <<< トラックリスト >>> 1. Roméo et Juliette featuring Juliette Gréco - 2. Gilles écoute un disque de rap et fond en larmes - 3. Paris Mais… featuring Wallen - 4. Circule petit, circule - 5. Lorsqu’ils éssayèrent - 6. Césaire (Brazzaville Oujda) - 7. C’est du lourd ! - 8. La marseillais - 9. Le faqir - 10. Conte alsacien - 11. Raconte-moi Madagh - 12. HLM Tango - 13. Noces à Grenelle ABD AL MALIK "DANTE" CD POLYDOR (Universal France) 5312795 フランスでのリリース:2008年11月3日 PS 1 アブダル・マリックのオフィシャル・サイトで,アルバムからのファーストシングル "C'est du lourd!"を聞くことができます。 アブダル・マリックのマイスペースでも"C'est du lourd!"だけが公開されています。 この抒情のストリングスとセンチメンタルな旋律に乗っかって,賢者の辻説教のような語り口で,善悪のこと,貧困の現実と理想のギャップ,サルコあてこすりの結論部までを一気に吟じてしまうのですね。すごいなあ...。 PS 2 (10月23日) アブダル・マリック新シングル"C'est du lourd!"のヴィデオクリップがデイリーモーションで公開されています。

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