2008年10月14日火曜日

セルロイドの30年



 10月13日,パリ20区にある高名な録音スタジオ「スチュディオ・ダヴート」(ローリング・ストーンズ,プリンス,マイルス・デイヴィス,カール=ハインツ・シュトックハウゼン...)で,『セルロイドの30周年』パーティーがあり,コラ・ジャズ・トリオ(写真),ホアン・カルロス・カサレスなどのライヴもあって,良いワイン,良いおつまみ,良い知人たちとの再会...たいへん楽しい一夜でした。この最後に挙げた「良い知人たちとの再会」というのが一番ジ〜ンと来るのですが,セルロイドというレコード・レーベルの母体だったMELODIEという配給会社が4年前に倒産して,働いていた人たちはみんな散り散りになっていたのに,この夜はほとんどの人が集まってきてくれたのですね。
 レコードCD会社の倒産なんかこの数年たくさん見てきましたし,倒産しなくても人減らしで消えて行った人たちもたくさんいます。私自身も同じ時期に4人もの社員を解雇してきた過去があります。したくてしたわけではないとは言っても,解雇された側はそうは思ってくれず,その後数ヶ月で連絡が途絶え,私は元スタッフの行く末を知らないのです。ところが昨夜のMELODIE の元社員たちは,同窓会のノリでみんな集まってきて,「おまえ何してる?」「俺3人目の子供ができた」みたいな会話なんですね。それを元社長は,良かった良かったと目を細めて見ている,なんていう美しい図でした。
 古い考えでしょうが,会社は大きな家族,みたいな中小企業が好きです。社長は親父さんで,社員ひとりひとりを良く知っているような会社ですね。昔はそんなに珍しくなかったはずなんですが,そういう会社って21世紀的現在に生きて行くのが難しいのでしょうか。
 音楽の仕事をする,というのは何も特権的なことではありません。この会社に集まってきた人たちは,営業にしろ事務にしろ倉庫の肉体労働組にしろ,みんな共通して「音楽の仕事をする」ということに何かを感じていたのだと思います。音楽が引き寄せる何かがあって,みんな仕事できたんだと思います。私は倒産前はこの会社にほとんど週1回顔を出しておりました。行く度に倉庫の若い衆が新手の冗談で迎えてくれるような会社でした。昨夜はそのたくさんの顔と再会できました。この夜は音楽があったからみんな集まってきたんだと,妙に納得したりして...。

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