2008年5月17日土曜日

1年ぶりでマルク・ゼルマティと電話で話す



マルク・ゼルマティは伝説の人物です。最初のコンタクトは92年頃だったと思います。ヴァージン・フランスの人から紹介されて、彼のレーベル「スカイドッグ」と仕事するようになったのですが、ものすごく荒いしゃべり方をする人で、おまえなんざロックのことなんか何にもわかっちゃいない、と何度もボロクソに言われたことがあります。それに比べたら同じフランスのロック系独立レーベルの老舗「ニューローズ」のパトリック・マテなんか本当にジェントルマンで、仕事もしやすかったのを覚えています。ゼルマティとマテは志向性や方法は全然違うのですが、70年代から独立系のロックを支えてきた二大人物で、プライベートではとても親しくつきあっています。爺は一緒に食事する回数はマテとの方が多く、電話で長時間しゃべるのはゼルマッティとの方が多いというつきあいでした。この話せば話すほど面白い二人のロック人間と、途切れずにつきあいができていた爺は果報者と言えるでしょう。
 それが去年の今頃でしょうね、ゼルマティもマテも私も、ビジネスの方がもう話もできなくなるほど悪くなっていて、それ以来疎遠になっていたのでした。
 きのう思い切って電話してみました。開口一番、ゼルマティは「おまえはもうこの世からいなくなったもんだと思ってた」という、彼一流のきつい口の聞き方で安心しました。まあ、悪いのはどこも同じで、おまえも俺もいつこの世から消えてもおかしくない時代だから、とますます私の望むゼルマティ調で...。
 マルク・ゼルマティは今年63歳になります。1972年、「オープン・マーケット」というレコード店をパリ(レ・アール)で開いたことから、ゼルマティの伝説は始まります。つまりロンドンでパンク・ムーヴメントが本格的にはじける1976年よりも前に、パリのアンダーグラウンドシーンではゼルマティらが動き回っていて、ストージーズ、フレイミン・グルーヴィーズ、キム・フォーリー、ニューヨーク・ドールズなどを呼んで大騒ぎしていたわけです。イギーとストージーズの「メタリック・KO」、MC5の「サンダー・エクスプレス」などの歴史的レコードがゼルマティのスカイドッグ・レーベルから出ていくんですね。さらに76年欧州大陸初のパンク・フェスティヴァル(ザ・ダムド、エディー&ホットロッズ...)を南仏モン・ド・マルソンで開き,翌年の同じフェスティヴァルにはザ・ダムド、ザ・ジャム、ザ・クラッシュなどのメンツを集め、セックス・ピストルズを除いてすべてのブリティッシュ・パンクスが一堂に会した最初で最後のイヴェントを作ってしまったのです。
 それ以来さまざまなロック武勇伝を生きてきた人物ですが、日本とも縁が深く、こちらのロックアーチストたちを日本に送り込んだり、ギターウルフやミッシェル・ガン・エレファントといった日本のアーチストたちをヨーロッパに売り込んだりということもやっていました。
 まあゼルマティの半生はいつかちゃんとした原稿で紹介したいと思っています。すごいエピソードがいっぱり出てきますから。特に70年代のパリのロックシーンの話はゼルマティに語らせたら、何晩聞いたって興味を尽きないでしょう。

 そのゼルマティがきのうポツリと言ったのは、もう30年間毎夏欠かさず日本に行っていたのに、今年は行かないんだ、と。もうマルク・ゼルマティは日本から用なしと宣告されたようなものでしょう。どうしてなのか。日本人は困った時にどんどん閉鎖的になっていく、困った時こそオープンになってリレーションシップの中で解決策を見つけていくというマインドがない、とゼルマティは言ってました。ロックの人間関係を(良くも悪くも)「マフィア」的に考えている彼からすれば、これまで日本との関係を義理人情的にも理解していたわけですが、「おまえの日本はもうおまえが考えている日本とは違っているんだぞ」と私に言うのです。
 もうちょっと突っ込んだ話を来週会って聞くことにしています。中高年世代の愚痴とはわけが違うはずです。マルク・ゼルマティですから。



PS : マルク・Zとジョー・ストラマー

6 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

マルク・ゼルマティ、すっごい興味ある人物です。
爺の原稿&後日談を楽しみに待っております。

Pere Castor さんのコメント...

あ,おひさしぶりぶりっ!
今発売中のがドミニク・クラヴィックで,来月(7月号)がフランソワ・アジ=ラザロ,その次がパトリック・フレモオ(これはアーチストではなくて,レーベル主です),そしてその次の回ぐらいにマルク・ペロンヌか,このマルク・ゼルマティを取り上げようと思っていますです。さなえもんと爺の共通のアイドル,ジョー・ストラマーのダチでもありますし。

匿名 さんのコメント...

キャー!画像UP感謝です。
マルクZもストラマーに負けじと劣らず
かなりカッコいい方ですね。

爺、今夜はバタクランでピガールですか?
楽しんできて下さい。

ラティーナ、毎月の楽しみになっています。
いつも楽しい原稿をありがとう。

Pere Castor さんのコメント...

 今ピガールのライヴから帰ってきました。
 フランソワはやっぱり貫禄だねえ。まだまだバタクランより大きなホールでできるはず。しかし、終盤、スーツを着たおっさんが二人もステージに駆け上って、ダイブを敢行したのを見た時は、みんな歳取るのが下手なんだなあ(on a mal vielli)と実感。
 フランソワは爺より2歳も若いのだぞ。

匿名 さんのコメント...

フランソワ近影UPありがっとう!
あまり変わっていないね。

Pere Castor さんのコメント...

なんか読みづらくなったね,このコメント欄。
調節のしかたがわからないので,修正に時間がかかりそう。
さなえもん,ありがっとう。切り干し大根と昆布届いたよう。