2007年12月17日月曜日

さびしい王様



 12月17日,毎朝のクセで起きるとラジオのスイッチを入れ国営ラジオFRANCE INFOのニュースが流れる。「大統領ニコラ・サルコジと歌手でマヌカンのカルラ・ブルーニが交際中」。えらく日本ぽいニュースだなあ,と思い,そういう夢を見ていたのかなあ,と思い出してみる。ベッドを起き出して,サロンに行くと国営テレビFRANCE 2のニュースが「ニコラ・サルコジとカルラ・ブルーニが15日土曜日にディズニーランド・パリでデート中のところを雑誌3誌が写真でとらえた」と言っている。
 Assez !!!
 もうこれ以上同じことをマスメディアが言ったら,爺は怒り狂うぞ。
 今朝は気温が零下で,外は霜で真っ白だ。きのうのニュースでホームレス支援団体「ドンキホーテの子供たち」が,去年のサン・マルタン運河での行動と同じように,ノートル・ダム寺院近くのセーヌ河岸にホームレスのテント村を開設しようとしたら,機動隊の出動で強制撤去させられた,きわめてヴァイオレントな映像を見せられたばかりだ。このホームレスたちはこの寒さをどうやってしのぐのか。そんな時に大統領はディズニーランド・パリで美人マヌカンと遊んで,そんなところをニヤニヤ笑ってピープル雑誌の表紙写真におさまっている。
 先週1週間,カダフィに翻弄され,「人権宣言発祥国」のメンツを泥だらけにされた国の大統領が,その翌日にディズニーランドで,美人マヌカンとにやにや笑って遊んでいて,サルコジの親友アルノー・ラガルデールがオーナーであるピープル雑誌パリ・マッチと,その傍系ピープル誌にヤラセで写真をとらせ,明けて月曜日の朝,フランスの全メディアがそのことしか言わないのだ。外は零下だと言うのに!

 一般誌L'Expressのサイトを見たら,「サルコジはフランスで最初のアメリカ大統領だから」と書かれていた。メディア工作,世論操作や世論はぐらかしに長けた策士であるから,というのである。セシリアとの離婚をサルコジはものの見事に逆利用し,「傷ついた男」のポーズを最前面に出すことで,国民の同情票を集めた。外遊の際にファーストレディ連れでないことはたいへんなハンディキャップであるというような論調を雑誌メディアに展開させた。
 大統領になる前まではプライバシーを書き立てられる度に烈火のごとく怒っていたサルコジが,大統領になったとたんプライバシーを露出して国民からの好感度とシンパシーを操作しようとしている。
 カルラ・ブルーニにはあきれる。もう少しインテリジェンスのある女性と思っていた。
 だが爺にはもうシナリオが読めている。サルコジの作戦である。
 数週間後サルコジはカルラ・ブルーニに振られることになっている。サルコジはまたそこで「傷ついた男」を演じることができ,その時の失政や国民からの批判を,そのセンチメンタル・ドラマで大目に見てもらえることになるのだ。
 自ら不幸を演じる男,作戦的に自ら振られる男になること,これを爺は「人工(じんこう)コキュ」と名付ける。

 若い頃に,爺よりずっと美男でスポーツ体型の優男であった親友がいて,当然ものすごくモテたのである。女の子たちが向こうから次々に寄ってくるタイプ。しかしそいつは遊ばずにしっかりと真剣に恋愛してしまう性格で,恋しては破れては泣き,また恋しては破れて泣き,ということをくり返していた。つまりそれでもっともっといい男になっていったのだけれど。実にいい奴だったのだ。しかし,恋に破れるサイクルはかなり早くて,数ヶ月から1年くらいで失恋していた。だがいい男なので次の女性は見つかるのだよ。私はそいつの恋人だった女性たちを4人ほど知っているが,驚いたことに,その4人が4人とも容姿がとてもよく似ているのだ。よくもまあ,こんな似たタイプとばかり恋愛ができるもんだ,と思ったが,同じようなタイプでないと愛せない,ということもあるのだろう。つまり理想型というのがすでに固まっているのかもしれない。
 今朝フランスのメディアでは,セシリア・サルコジとカルラ・ブルーニの相似性を強調するものも少なくなかった。だからどうだと言うのか。背の小さい男にはナポレオン伝説が似合う,とでも言うのか。外は零下だと言うのに。


 

5 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして^^。

日本のワイドショーでも流れてましたよ、ヤラセなんですか。
権力者と共犯関係にあるテデスキ嬢より、任期中に離婚したアルベニスの曾孫の方が立派に思えてきました。

国民は寒さに凍えているのに、全く・・・

Pere Castor さんのコメント...

Tchaoさん,コメントありがとうございました。
問題はサルコジが誰とくっついたり別れたりということではなく,権力のトップにある人間が露骨にメディアをコントロールしようとしているのが見え見えであるということだと思います。今日のル・モンド紙(ラガルデールはここの株主でもあります)は,この報道を明日20日刊行の号でする「パリ・マッチ」誌の社内での当惑を伝えています。マッチはこの写真取材にカメラマンのみが立ち会っていて,記事書きのジャーナリストが行っていないのです。つまり写真は出せ,文書記事は控えろ,という圧力がどこかからかけられているわけです。
「ロックスター」のような型破りな大統領がフランスに現れた,と内外で報道されることは,彼の望むところでしょう。この望みを叶えるためには言論コントロールも辞さないというやり方がまかり通るようになったら,全体主義でしょう。

匿名 さんのコメント...

pere castorさん 返信ありがとうございます。
エジプトでのバカンスが朝日新聞でも記事になってました、「実業家が持つ自家用ジェット機で」とありますが、こんなに便宜を図ってもらったら、当然癒着がありますね。
それにしてもカルラ・ブルーニ、本当にインテリジェンスがないです、がっかりです。
リッキー・リー・ジョーンズやバルバラなどからインスパイアされ曲を作ったみたいですが、サルコジのアクセサリー化している彼女にバルバラの苦悩が解かるのでしょうか。

講談社が発行するクーリエ・ジャポンという雑誌に"パリマッチよ、サルコジの圧力に負けてはならない"という記事を発見しました。http://blog.moura.jp/courrier_koga/2007/10/1011_2414.html

LVMHが、経済紙レゼコーを買収したみたいですが、これではLVMHの業績などに関して公正な報道は期待できませんね。

Pere Castor さんのコメント...

Tchaoさんコメントありがとうございます。
12月27日のパリジアン紙での、ミッシェル・ポルナレフのインタヴューの一部です(↓)

(パ紙)De votre Californie d'adoption, vous suivez également les aventures sentimentales de notre président ?

(ポルナレフ)Absolument. Il y a quelques années, j'avais envoyé un mail à Carla Bruni lorsque son premier album « Quelqu'un m'a dit » était sorti. Je lui prédisais alors que ce serait un énorme succès. A l'époque, je pense qu'elle n'a pas vraiment cru que ce message venait de moi. En tout cas, concernant Nicolas Sarkozy, je pense que c'est de sa part une très belle preuve d'ouverture au centre...

★★★訳はじまり★★★

(パ紙)第二の故郷カリフォルニアにあっても、あなたはわが国の大統領のアバンチュールについて興味を持っていますか?

(ナレフ氏)もちろんだとも。数年前にカルラ・ブルーニの「ケルキャン・マ・ディ」が出た時に、俺は彼女にメールを送ったんだ。これはものすごいヒット作になるぞ、って俺は予言したのさ。その当時は彼女はそのメッセージが俺本人から送られたなんて信じていなかったろうね。それはともかく、ニコラ・サルコジに関しては、これは彼の「中道抱き込み政策」の見事な成果だろうね....。

★★★訳終わり★★★

おわかりでしょうか?
サルコジ治世になって、内閣組閣の際に保守だけでなく、中道や左翼陣営の人材を大臣職につけて手慣づけることによって、サルコジは中道と左翼を無力化しようとしたわけです。これを ouverture à gauche(左翼への開放策=左翼懐柔策)、ouverture au centre(中道への開放策=中道懐柔策)と称します。
ナレフ氏は、サルコジのカルラ・ブルーニ接近を「中道抱き込み」と言ってしまったのですよ。ココロは、まんなか道をとっちゃった、という、ナレフ流のめちゃくちゃにベースケな発言なんですよ!

匿名 さんのコメント...

pere castorさん こんばんは^^。

簡単に抱き込まれたのがカルラ・ブルーニというわけですね、欲深い人間は権力と云う蜜に群がる蜂のようですね。
年金問題や薬害肝炎問題で馬脚を表わしつつある日本の厚生労働大臣も昔は『日本人とフランス人―「心は左、財布は右」の論理』という本を書かれ、フランス人の寛容の精神を説かれていました。