2007年10月25日木曜日

ミュラの声にはアプサント効果が...



 ジャン=ルイ・ミュラ『シャルルとレオ - 悪の華』
 Jean-Louis Murat "CHARLES ET LEO - LES FLEURS DU MAL"


 シャルル・ボードレール(1821-1867)の詩集『悪の華』に,レオ・フェレ(1916-1993)が曲をつけたものを,ジャン=ルイ・ミュラ(1952- )が新しい編曲で歌った12曲のスタジオ録音CDと,ドニ・クラヴェゾルのピアノとミュラのヴォーカルのデュオによる14曲(ボードレール詩/フェラ曲)のライヴDVDのセットです。
 聞く前に構えてしまいますよね。高踏で衒学的な文芸シャンソンが展開されるのではないか,と。それはボードレールですからポップソングとはまるで違ったもので構わないのですが,突き放されるのを覚悟して聞くとCDの第一音が始まるやいなや,ふ〜っと緊張が抜けて,いつものミュラの声の詩を愛撫するような歌い込みに引き寄せられ,酔い心地が始まっていきます。
 これは酔いのアルバムです。文学の人たちじゃなくても,この酔いは絶対に共有できます。聞き始めたらアルバムはあっと言う間に終わっています。もう一回初めから,と思うに違いありません。この酔いは曲と曲の違いをわからなくしてしまいますから。

<<< TRACK LIST CD >>>
1. SEPULTURE (BAUDELAIRE/FERRE)
2. AVEC SES VETEMENTS ONDOYANTS ET NACRES (BAUDELAIRE/FERRE)
3. LA FONTAIRE DE SANG (BAUDELAIRE/FERRE)
4. L'HEAUTONTIMOROUMENOS (BAUDELAIRE/FERRE)
5. L'HORLOGE (BAUDELAIRE/FERRE)
6. LE GUIGNON (BAUDELAIRE/FERRE)
7. MADRIGAL TRISTE (BAUDELAIRE/FERRE)
8. LA CLOCHE FELEE (BAUDELAIRE/FERRE)
9. L'EXAMEN DE MINUIT (BAUDELAIRE/FERRE)
10. BIEN LOIN D'ICI (BAUDELAIRE/FERRE)
11. JE N'AI PAS OUBLIE, VOISINE DE LA VILLE (BAUDELAIRE/FERRE)
12. A UNE MENDIANTE ROUSSE (BAUDELAIRE/FERRE)

CD+DVD V2 MUSIC VVR1048802
フランスでのリリース: 2007年10月

1 件のコメント:

Pere Castor さんのコメント...

書き忘れました。数曲でデュエットまたはヴォカリーズで登場する女性モルガンヌ・アンベールがすごいなあ、と思うのは、ミュラの声の存在感とボードレール/フェラの作ってしまったやや重そうな空間に、無垢でも清純でもないふう〜っと素直な女性の声がちゃんとその場所を確保できてしまう、という不思議。妙です。